今回から数回に分けてソレアを例にフラメンコギター奏法の基本など色々考察していきたいと思います。
フラメンコギター奏法は以前のブログに基本的なトレーニング方法を取り上げていますのでそちらも参照してみて下さい。
使用できそうな課題曲をネットで物色していましたが、あまり簡単すぎて面白みがないしかといって技術的に難しすぎても基本を練習するのには向かない、曲調が難解すぎてもちょっと・・・等なかなか適当な物が無かったのですが、やっとPaco Peña(パコ・ペーニャ)のSantuario(聖マリア)という曲名のソレアを見つけました。
パコ・ペーニャはロンドンに住んでいるスペインのコルドバ出身のフラメンコギタリストでフラメンコギターの教育にも熱心な方の様でToques flamencosという教則本も出しています。(欲しいのですが、まだ手に入れていません)
パコ・デル・ルシアやビィセンテ・アミーゴのようなモダンスタイルというよりトラディショナルな曲を多く弾くスタイルのギタリストで、非常に明快なテクニックがとてもお手本になります。
パコ・ペーニャの曲はフリー?の楽譜もネット上に幾つかあり教材としてはもってこいだと思います。
CDも数多く出ていますが残念ながら此の曲が入ったものは、何れか見つける事ができずパコ・ペーニャの実際の演奏は聞く事が出来ませんでした。
それと見つけた楽譜はちょっとわかり辛いところや演奏法がハッキリわからない部分があったので逆に研究になるかと思い、一旦Guitar Proで打ち直しながらあれこれ考えながら弾いてみて運指を考えてみたりしながらレコーディングし、それを更に聞いてみては修正を加えるという方法で考察を進みめました。
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「Toques flamencos」というペーニャ氏の教則的意図をもった曲集に納められているのを見つけました。
出版当初は、楽譜のみだったようですが、現在は模範演奏のCD付きになっているようです。
因みに此の曲集の曲のほとんどはGuitarProやTableditのデータは、ネットで見つける事が出来ます、著作権XX的に微妙ですが・・・
フラメンコは伝統色の強い物はとりあえずパスされているようですが、ビセンテ・アミーゴのTab譜なんかの最近のものはどんどん削除されているようです。
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此の曲はギターソロ用だと思いますが、伝統的ソレアの特徴がよく出でてファルセータもフラメンコファンなら聞き馴染みのある物なので覚え易いと思います。
テクニック的には、右手は基本的なフラメンコギターテクニックが必要ですが左手の運指は低ポジションで難しいテクニックは一部しか使われていないので、クラギの中級程度のレベルでこなせるかと思います。(僕は未だフラメンコギターのレベルの基準がよく分かっていないかもしれないので取りあえずクラギのレベルを基準としていますご了承を・・・)
カポは2か3フレットでテンポーは100-110くらいがよろしいかと・・・
譜面ではゴルペを+で表わしています。
再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
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先ず出だしの1-24小節(2コンパス)ですが、パターン的に考えるとメディオコンパスのようです。(違っていたらすいません)
半分の6小節を1コンパスとして弾くので4コンパスとなるわけですね
伴奏の場合は割合珍しいですが、ソロの場合いきなりトレモロで始まったり変則的なパターンもよく見ますね。
*フラメンコギターの伴奏法については、今の所まったく手をつけていない分野なので、ここではすべてソロの場合の話と考えて下さい

Santuario(聖マリア)と曲名が付いていますのでカーニバル或は儀式等の何か宗教的のモチーフがあるのかもしれませんが形式がソレアなので、曲の主なイメージは強く奥深い母性といったところでしょうか
ですからリズミカルに弾くよりスピードをややセーブしながら厳粛、慈愛、奥深いをイメージして弾くといいかもしれません
3拍目の装飾音的音は軽く弾くよりコンパスを意識してしっかりした音で弾くと良いみたいです。
フラメンコトーンとは
フラメンコギター音色につてい語る時よくフラメンコトーン等と言いますが、音色はフラメンコギターとクラシックギターでは、材質や構造が違うのでもちろん違いますが、右手のタッチと弾き方によっても音色が違ってきます。
クラギとフラギ奏法は右指の弦との角度、当て方、インパクトの与え方微妙に異るのですが、これらは演奏フォームが違う事に起因する部分もあります。
クラギをある程度やってクラギの右指のタッチが身に付いているとフラメンコギターで弾いてもどうしてもクラギのタッチになってやや甘い音になりがちです。
逆にクラシックギターでもタッチの仕方では、フラメンコ的な音がある程度出せる様になりますが、音の遠達性の優れた深みのある所謂クラシックギタートーンの優れたギターは、やはりフラメンコには、向かないようです。
どちらかというと、クラシックギターでも明るいく軽い音のでるギターの方が向いているようですのです(試したと言っても数本ですが・・・)
ちょっと話題がそれますが、フラメンコギターをやっている方ならご存知だと思いますが、フラメンコギターには、現在2種類のものがあります。
一つは糸杉(シープレス)を使った白っぽい(黄色ぽい?)伝統的なギターで、弾くと「ああこれが、フラメンコトーンか」とわかる程音の立ち上がりがはやく、良くも悪くも指の動きによく反応します。
別な見方をするとクラシックには不向きです。
もう一つは両用ギターとかnegra(黒)と呼ばれているフラメンコギターです。側面板と裏板にハカランダやローズウッドを使っているので見かけは(黒っぽいのでそれとわかる)クラシックギターのように見えます。
両用とはクラシックとフラメンコ両用と言う意味ではなく伴奏とソロの両用という意味らしいですが、あの糸杉独特の明るく乾いた音色はやや犠牲になっているようですが、遠達性が優れているのでソロギタリストはコンサート用によく使っているようです。
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次のコンパスはソレアの基本的コンパスで6連符を伴ったE-F-A・C-E-G・F-E-F・Eのソレアの典型的なメロディーラインになっています。

低音部のメロデーィはできるだけアポヤンドしてハッキリと力強く聞こえるようにします。
6連符のアルペジオは伴奏というよりメロディの一部としてフラメンコギターの場合鋭く「キラキラ」と聞こえる様に弾いた方がいいようです。
どちらかというとアルペジオは走りがちになったり音を飛ばしてしまったりする事が多いのでテンポを押さえ気味にすべての音がはっきり聞こえるよう弾き納めるようにします。
最初難しいのはp指の弾弦とゴルペを同時に打つ部分で、リズムが乱れたり弦の音とゴルペの音がバラバラあるいはゴルペの音が大きすぎたりする場合はユックリと弾いて慣れるようにします。
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コンパスは終了のジャーマーダの形式をとってはいませんが最後のF---Eのコードで主題の終了といった感じです。
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次の2つのコンパスはソレアの基本リズムのゴルペを伴うラスゲアードのコンパスです。

中抜き3連は弾むようなリズムに向いていますが此の曲の全体的イーメジからはあまりリズミカルに弾かないほうが良いようです。
元の楽譜上にはma・ma・i+ゴルペと指示されていましたが、maに対してiが弱いと感じるようでしたらp+ゴルペに変えても良いかもしれません。
ハンマー-オン(上昇スラー)の音はラスゲの音にかき消されないよう出来るだけ強く出します。
3連の最後のアップストロークのラスゲから次のCh・a・m・iの5連ラスゲに繋がる部分は「間」を開けず、次のコンパスの最後まで一連の流れとして意識を途切らさずに弾き込みます。
2つめのコンパス3小節目の3拍目のラスゲの終わりのF音からE音の弾き方ですが、iのダウンストロークの返しでアップストロークするようにF音をアルアイレで軽く引っ掛けるように弾く、つまり単音のラスゲを弾くようにすると流れが自然になります。
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次のポイントはコンパスの終了から次のコンパスに繋げる部分ですね

前の小節は典型的なコンパスの終了形をとっていますが、B音のアクセントで終わっています、この終わり方は何かしらエネルギーが極限の一歩手前で止まっているかのようです。
例えばコップの水が淵まで溜まっている感じ・・・かといって表面聴力で水面がふくれている所まではいっていない・・・
そのままのエネルギーのポテェンシャルで次の装飾音的トレモロに入ります。
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此の感じはちょっと伝えにくいのですが、次のEコードのリズムをはずさないように装飾音的トレモロ部を前のB音に食い込ませて弾くのですが、この圧縮が表面聴力で水面がふくれて流れ落ちるようにエネルギーを持っていく感じにするとカッコイイ感じになります。
次の装飾音的アルペジオも幾分前乗りぎみに弾くといいようです。
つまり実際には

となるように弾くんですね
装飾音的トレモロ、アルペジオは慣れないうちは、一旦ima指を弦にセットしてから弾くと弾き易いですが、どうしても一瞬流れが途切れる(消音)ので、セットせずダイレクトにパラララと弾けるようにします。
低音のメロディーはすべてスラーで出すようになっています。
スラーはどうしても後が尻すぼみに聞こえてしまうので、強力なスラーで音を出す必要があります。
最後のE音のハンマーリング(上昇スラー)は音が出にくいですが、ハンマーリングによる雑音は気にせづ強く打ちましょう。
フラメンコギターは弦高が低いので普通でも振動によるビビリ音が入る事がありますが、これもフラメンコギター独特の音の一部だと考えて気にしない、気にしない!
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次のコンパスはチット難しいですね。
此の曲の難しい部分の一つです。

ポイントが4つ程あります。
1. 4弦のF音の押弦(3指)を最後まで離さずキープしながらメロディーのスラーを弾き上げる
2. 5連スラーのでリズムを崩さない
3. スラーとリズムのバランス
4. フラメンコ的な音の流れを出す事
1. はフラギの曲でスラーの連続の時、低音をキープするパターンで結構登場するので、日頃からトレーニングしておいた方がいいでしょう。
つまり左手の独立性が確保されている必要があるわけです。
2. は最初は団子になったり間延びしたり安定しませんがギターは打楽器と言う事も思い出してリズミカルに弾く様にすると段々コツが分かってきます。
とはいっても指の独立性の問題もありますが・・・
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3. スラーの用い方が(テクニック的には同じですが)フラギとクラギとは基本的にちょっと違う様な気がしています。
クラギではスラーを用いる目的は、速い音の変化をスムーズにするため、つまりレガートの為に用いる、シンコペーションを表現するの為、スラーによる音色そのものを求める為等ですが
フラギではレガートにする為というよりウネウネとしたカンテの「こぶし」を擬似的に表現する為にスラーの音色を積極的に使うことが多く、速い音の変化を強調する場合は、スラーを使うよりピカードを使用する事の方がはるかに多いようです。
スラーでは音量が落ちぎみですが、フラギでは逆にスラーが掛かっている音にアクセントがくるなど、力強さがより求められるのでクラギとは違ったトレーニングが必要だと感じています。
4. ここで言うフラメンコ的音の流れとは
付点を伴ったリズムパターンです。
即ち

のようなアキュティレーションを意識して弾くとそれっぽく聞こえます。
スラーが伴っているので難しく感じられますのでゆっくり弾いてリズムを指に覚え込ませるまで弾き込むことが必要ですね
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次のファルセータは先ほどの6連アルペジオと下降スラーの音階の組み合わせです。

やはり3小節目のアルペジオからスケールへ繋げる部分が難しいですね
2拍目のアクセントを幾分強調してその後を雪崩落ちるようにややスーピドをaccel.(上げて)してスラーし最後のの終止形でa tempする(テンポを戻す)ようにしてもいいんでは無いかと思います。
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コンパスと言うとなにかガチガチに拘束されているように聞こえますが、「リズムにノル事」が重要であってエネルギーの集散によって部分的には伸縮があるものです。
そうする事でまったく同じファルセータでもまた違って聞こえます。
次は先ほど同様のタイプの装飾音的トレモロではいるコンパスですが、終息のジャマーダです。
続く
パコペーニャさんの演奏を見付けましたので,ご存知かもと思いましたが,報告させて頂きます.
75年(私の生まれた年)なのでだいぶ古いですが.
http://www.youtube.com/watch?v=c8dpwH7FrgM
(ちなみに後ろ姿はジョンウィリアムさん)
この記事がなければフラメンコに挑戦する事はなかったと思いますので,大変感謝しております.
これからも宜しくお願いします!
ともにフラメンコギターに挑戦していきましょう!
この曲(Santuario)を練習して3年が経ち色々と分ってきて
当時の知識やテクニックについて加筆しなければいけない部分もあるのですがまだ手をつけていません(ブログを見て頂いている方々に申し訳ない)
その後この曲が納められているパコペーニャ氏の「Toques flamencos」を購入し
LA ROMERIA(アレグリアス)
SON DE CAMPANAS(シキリージャス)
TONOS LEVANTIOS(タランタス)
EN LAS CUEVAS(フアルーカ)
がなんとか弾ける様になったので
トレーニングの際に気づいたことやトレーニングのポイントやらが幾つか有るのでまた紹介しようと思っています。